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「縦糸」に「横糸」を組み込みながら、実践的学びと自己基盤を確立する 〜NPO法人日本スクールコーチ協会〜

こんにちは!Smart相談室CEOの藤田です。
この記事は連載企画「『コーチングとはなにか?』ICF認定スクールに聞いてみた」の一環として、特定非営利活動法人日本スクールコーチ協会 理事長の蘓原利枝さん、副理事長の尾崎郁子さんにインタビュー取材させていただいた内容をまとめたものです。

特定非営利活動法人日本スクールコーチ協会のHPより抜粋

15年以上前に、原体験から生まれたNPO法人

(藤田)本日はよろしくお願いします。はじめに、蘓原さんの自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?

(蘓原さん)特定非営利活動法人日本スクールコーチ協会(以下日本スクールコーチ協会)の理事長と、株式会社ウーマンズプラットフォーム代表をしております、蘓原利枝と申します。

私は過去レストランや高級ランジェリーショップを22年間経営しておりました。そんな中、人生を変えると決めた出来事が発生し、50代最後の時に、教育現場にコーチングを導入したいとの想いから、NPO法人として日本スクールコーチ協会を設立しました。

(藤田)尾崎さんも自己紹介をお願いします。

(尾崎さん)はい、尾崎郁子と申します。日本スクールコーチ協会では、副理事長と養成事業部長をしています。養成事業部とは、コーチを養成・育成する部門です。

また、私個人では、個人のお客様や企業様向けにコーチングを提供しています。外資系製造業のマーケティング部門で13年働いた後、コーチに転身して20年以上になります。子育てとコーチ業を並行する中で、思春期の娘とぶつかることがありました。そんな時に蘓原と出会い、日本スクールコーチ協会のコーチ養成講座を受講しました。1期生だったんです。そこから、私は人としてのあり方を見直し、娘との関係も大きく変わりました。

(藤田)NPO設立の初期から、蘓原さんと一緒にここまで作りあげてこられたんですね。

「子どもたちの幸せ」から発展したコーチングスクール

(藤田)NPOを立ち上げられた背景を教えてください。

(蘓原さん)主婦から2店舗の経営者となり、仕事に専念していた50代半ばに、留学から帰った娘たちが幼少期に抱え込んでいたトラウマに苦しんでいたことを話してくれたんです。

小3と小6の娘たちが祖父母にお世話になっていた時に、家族の問題で不安な状態が長く続いたことが原因でした。子どもたちは仕事で頑張っていた私に心配をかけまいとして、自分さえ我慢すればと思って、子どもながらに自己犠牲の精神で耐えていたんですね。

家族の間で本音のコミュニケーションが取れなかったことが、娘たちを苦しめていた原因だったと気づき、親子で心理学やコーチングを学びました。心の内を本音で話せるようになった時、「これが、本当の幸せなんだ」と実感したんです。それがきっかけとなって、こういうコミュニケーションを「学校」に拡げたら、子どもたちは幸せになって、家族関係や世の中も変わるだろうなぁと思ったんです。

(藤田)子どもの幸せを願って志した後に、「学校」へアプローチしていく経緯はどのようなものでしょうか。

(蘓原さん)学校に着目したのは、自分自身の小学校時代の恩師との出会いからです。若い先生だったんですけど、その先生が私を励まし、認めてくれるようなコミュニケーションをとってくれて、自分が変わったんです。それまでは引っ込み思案で、勉強もあまりできないし、自分に自信がなかった。でも、その先生の励ましによって、勉強はすればできるし、何でもやればできるんだって思えるようになった。

それを思い出した時に、「あ、あれがコーチングだよなー」と思ったんですね。そういう先生が、学校にいたら子どもは変わる。悲しい事件も起こらない。そう思ったんです。

地道に、亀の一歩で、草の根運動を進めている

(藤田)設立当時は、学校教育の場へコーチングを紹介する活動からスタートされたのかなと思うのですが、大変ではなかったですか?

(蘓原さん)NPO法人の設立自体は、賛同していただける方が多かったので、比較的スムーズに進みました。

一方で、教育現場は独特ですよね。初めて文科省の門を叩いた時には世界観の違いを感じました。「現場で働かれている先生方」はとても前向きに頑張っていました。でも学校現場はさまざまな問題を抱えていて、さらに構造的な特異性を感じました。

文科省の事務次官の方とも打ち合わせさせていただき、私の感じた課題認識や教育現場におけるコーチングの有効性などをご説明して、教育の現場にコーチングを浸透させる活動を推し進めていきました。志はあるものの、現状をすぐに変えることの難しさを理解し、ちょっと絶望的になったこともあります。

 ですが、日本の教育システム全体を変えようとか、そんな大それたものではなくて、教育現場で、先生も子どもも幸せになることが大切という思いでこれまで活動してきました。本当に地道に、亀の一歩で、草の根運動を進めています。最近は、高校生向けにコミュニケーションの教科書を作成しました。

高校生のための参考図書の表紙

教育・ビジネス現場において「こんな大人になりたい」と思えるコーチを育成する

(藤田)日本スクールコーチ協会は、先生を対象にコーチングを教えている、ということで良いでしょうか?

(蘓原さん)いいえ、近年は一般企業や自営業の社会人が多いです。設立当初は教育現場を対象にしていたので、現在も教育関係者が1/3くらいいらっしゃり、他のスクールに比べると多い傾向にあると思います。協会の名称が「スクールコーチ」なので、教育関係者の目に留まりやすいのでしょうね。

(藤田)そうなんですね。では、教育現場にコーチングを普及する活動で培ったことが、講座のカリキュラムに生きていますか?

(蘓原さん)生きていますね。私たちがNPO法人を設立した時に、どういうコーチを育てようかと考えました。子どもは正直ですから、コーチが学校に出向いたとき、正直言って子どもから受け入れてもらえないコーチもいたんです。その光景を目の当たりにした時、私たちは「子どもたちが、こんな大人になりたい」と思えるようなコーチを育成する必要があると気づいたんです。その前提でカリキュラムを開発し続けています。コーチングスキルは当然ですが、人を育てる生業にふさわしい人間力が身につくことを重視しています。

(尾崎さん)コーチとしてのあり方をとても大事にしていて、コーチ自身を育てるっていうことを、重要視してるんです。どんどん変わる情報社会の中で、大人自身も将来が不安で、これから人生をデザインし直していきたいっていう人がたくさんいます。この講座を学んで、新しい人生を歩み始めた、生き方が楽になったという人が多くいらっしゃいます。

(蘓原さん)学びの場と言う意味では、講座の中で「ビジネス界の人」と「教育界の人」と一緒に学ぶことで、新しい気づきを得る、どちらもすごく理解が深まっていく、そんな場になっています。

「縦糸」に「横糸」を組み込みながら、実践的学びと自己基盤を確立する

(藤田)カリキュラムにはどんな特徴がありますか?また、コーチングに関して、大切にされていることはありますか?

(尾崎さん)一つは、「縦糸」と「横糸」を大切にしています。
コミュニケーションのスキルを「縦糸」、コーチとしてのマインドを「横糸」と言っています。縦糸を強固なものにしていくためには、同時に、俯瞰的に物事を捉える、自分自身をよく理解して、自己基盤をちゃんと整える(=マインドセット)が必要です。この「横糸」を入れることで、「縦糸」であるコーチングスキルがどうして機能するのかとか、どのように活用すると効果的なのかが、ぐっと理解しやすくなります。

 もう一つあります。コーチングでは、クライアントの目標達成を支援すると言いますけれども、今達成したいと考えている目標は、自分の人生にとってどんな意味があるのか、達成するとその先には何があるのかを「ライフデザイン」の視点から、コーチングをしていくように指導しています。

特定非営利活動法人日本スクールコーチ協会のHPから抜粋

15年以上変わらない行動指針

(藤田)コーチのあり方として、スクールが求めているものはありますか?

(尾崎さん)私たちは、講座を始めた15年以上前から一貫して6つの「コーチの核となる理念」を掲げています。これらをコーチになる上での行動指針としてお伝えしています。

日本スクールコーチ協会コーチの核となる行動指針
(1)ラポールをすぐに築くことができ、安全安心の場づくりができる
(2)人には無限の可能性があり、答えはその人の中にあると信じている
(3)愛と尊敬をもって100 %相手の味方になる
(4)相手の本質と向き合い、心から共感できる豊かな感性をもつ
(5)高い自尊心をもち、自分も相手も大切にする
(6)自分自身の成長のために学び続けている

6つの行動指針

(尾崎さん)行動指針は、コーチとしても当然ですが、人としてあるべき姿を示していると言って良いと思います。普遍的で時代に左右されないものだと思います。

(藤田)蘓原さんは、6つの中で大切にされているものは、ありますか?

(蘓原さん)6つとも大切にしています。その上で、自分自身が気をつけていることは、5つ目の「高い自尊心をもち、自分も相手も大切にする」ですね。

私はこう見えても長く生きていますし、経験も多く積んでいます。でも、20代の人とも30代の人も結構仲良く話ができる。それは、人間は対等であると考えているからです。対等な関係で関わることが、一番相手を尊重するということであり、相手に安心感を与えることにつながっていると思います。
年齢とか経験とかではなく、講座内でも受講者さんと講師はお互いが学び合う対等な関係性を築いています。

企業にコーチングが導入されたら、そこで働く方々は、みんな幸せになる

(藤田)企業の方が、コーチングを導入された際のメリットはどのようなものでしょうか?

(蘓原さん)企業であっても、それぞれ個人の人間の集まりです。コーチングを身に付けると、各々が自分の幸せとは何かを認識するんです。そうすると主体的に行動するようになり、「セルフリーダーシップ」が育つので、自己成長していきます。

また、コーチ的なコミュニケーションが図れると、自然に信頼関係が構築されていきます。しかも、会社のビジョンとのつながりを俯瞰的に考えられるようになって、自己矛盾が減少し、メンタル的な負のストレスも減ります。そのような職場では、人として対等に尊重し合える環境が整っていきます。だからそこで働く社員は会社を大切に考えるようになり、会社全体の成長をもたらすと考えています。

(藤田)とても勉強になるお話ばかりでした。ありがとうございました!

インタビュイー紹介

特定非営利活動法人日本スクールコーチ協会 理事長 蘓原 利枝さん

蘓原 利枝(そはら・としえ)
特定非営利活動法人日本スクールコーチ協会 理事長

株式会社ウーマンズプラットフォーム 代表

専業主婦からレストランと高級ランジェリーショップを22年間経営。2店舗ともに日本一の売り上げを達成する。家族関係の問題に直面し、親子で心理学やコーチングを学び、新たな使命に気づきNPO法人を設立。1年半で全国6支部、総受講者数は2万名を超える。ライフワークとして、10万人以上の女性活躍支援をしている。夫、2人の娘と、1人の孫と楽しく暮らしている。

特定非営利活動法人日本スクールコーチ協会 副理事長 尾崎 郁子さん

尾崎 郁子(おざき・いくこ)
特定非営利活動法人日本スクールコーチ協会 副理事長
国際コーチング連盟認定プロフェッショナルコーチ(PCC)

コーチング楽園 コーラルリーフ 代表

外資系製造業で商品コンセプトの開発に携わった後、コーチングを学び、プロコーチに転向。人が自身の価値や喜びをみつけて変わっていく過程に立ち会えることに醍醐味を感じている。2023年 国際コーチング連盟のPCCマーカーアセッサートレーニングを修了。ワークショップのファシリテーション活動を通じて、人が出会う、繋がる、成長する場づくりも行なっている。二人の娘に“育てられ“、今の自分があることを実感している。

特定非営利活動法人日本スクールコーチ協会について

コーチングという対話を通して “自らの人生を切り拓く子どもたちを育てる”というミッションから、2008年NPO法人を設立。変化の激しい昨今において、子どものみならず成人の人生設計や仕事にも適用されるべきものと考え、「コーチングをビジネスと教育のインフラに」をモットーに、”人を育てる”コーチングを個人や教育界、ビジネス界に普及する活動を行なっている。コーチ養成講座では、国際水準のコーチを養成している。

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