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現役選手が考えるアスリートのセカンドキャリア問題 〜プロフェンサー山田優さん特別インタビュー〜

 こんにちは!Smart相談室CEOの藤田です。
今回は、「アスリート応援プロジェクト」でサポートしているプロフェンサーの山田優さんと、プロジェクトにご協力いただいているSmart相談室カウンセラーの岡安一正さんに、アスリートのセカンドキャリア問題についてお話を伺いました。

写真中央 山田 優(やまだ・まさる)
所属:山一商事
出身地:三重県
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【戦績】
◎パリオリンピック
男子エペ団体:銀メダル(2024年)
◎東京オリンピック
男子エペ団体:金メダル(2021年)
◎アジア競技大会
男子エペ団体:金メダル(2018年ジャカルタ/2022年杭州 2連覇)
◎フランスサンモールワールドカップ
男子エペ個人:銀メダル(2024年)

写真右 岡安 一正(おかやす・かずまさ)
Smart相談室カウンセラー/アスユメLabo.代表

1971年、東京生まれ。元アルペンスキー選手。16歳でスポーツショップ2社とのスポンサーシップ契約を締結。駒澤大学競技スキー部時代に大会中のケガが原因で現役を引退。その後はコーチに転向し、大学卒業後もパラスキーチームを中心に多くのアスリートをサポート。1996年、ソニーロジスティックス株式会社に入社。2003年、ソニーテクノクリエイト株式会社に移籍 。事業戦略室(社長室)にてソニーの人材戦略、人材開発などを担当。2020年、プロモーションアナリストとしてマクドナルド(HAVIサプライチェーン・ソリューションズ・ジャパン合同会社)に転職。2022年3月 、キャリアコンサルタントとして独立。アスユメLabo.として事業をスタート。美容系専門学校キャリア心理学講師に就任。11月、スポーツ庁キャリアセンターアスリートキャリアコーディネーター選任。

*アスリート応援プロジェクトとは

 頑張る人たちをSmart相談室によってサポートしたいとの想いから発足したプロジェクト。 特に、日本スポーツ界が課題として抱えている現役アスリートのメンタルヘルス対策やキャリア支援、引退アスリートのセカンドキャリア支援を、カウンセリングやコーチング、ティーチングを通して積極的に推進する新しい取り組みです。支援アスリートに対して「Smart相談室」を無償で提供しています。
発足の想いは以下で語っています。


相談を受けることもすることも

(藤田)山田さん、岡安さん、本日はよろしくお願いします!おふたりはもともとお知り合いですよね。出会いはどういったものだったんですか?

(岡安さん)アスリートが集まるパーティーで初めてお会いしましたね。

(山田さん)僕が後輩を連れていったときですね。僕は後輩から今後について相談を受けることが多いんですけど、人を集めて相談を受けようという会を開いたんです。その会で初めてお会いしました。

(藤田)なるほど。山田さんは普段から相談を結構受けられるんですか?

(山田さん)そうですね、僕は後輩大好き人間で、後輩からはよく相談を受けるんです。先輩が嫌いなわけじゃないですよ(笑)

(藤田)後輩思いなんですね。とはいえアスリート同士、言える話言えない話いろいろあると思うんですが、いろんな相談を受けられるんですか?

(山田さん)そうですね、アスリートってある程度のレベルになると、プライドがあって相談しにくいということもあると思うんです。でも引退するって決まったら、みんなプライド捨てて相談してくれるんですよ。だから技術面の相談を受けることはあまりないですけど、今後についての相談はよく受けます。

(藤田)そうなんですね。相談できること自体安心しますからね、心の支えになってると思います。山田さんも岡安さんに相談されたり、お話しされていますよね。どんなお話をされるんですか?

(山田さん)最近は自分がしたいことをどういう形でなら実現できるかという相談をさせていただいていて、イベントや企画など自分の今後のやりたいことについて話しています。

(藤田)その相談の際にSmart相談室を使っていただいているんですよね。使ってみて、いかがでしょうか?

(山田さん)しゃべりやすくて、すごくいい空間ですね。予約の取り方とか操作が分かりやすいですし、明るくて触れやすいデザインもすごくいいですね。そのおかげで、相談することに対して抵抗がなくなるっていうのはあると思います。

1つだけ言うとしたら、時間がいつも足りないですね(笑)30分だといつも時間オーバーしてしまって、もう1回予約して入り直して…ってしています。それくらいずっと僕もしゃべり続けちゃうんです。僕の愚痴大会みたいになることもあるんですけど(笑)

(藤田)そうなんですね、でも愚痴を言うっていいと思いますね。まずそこから入って、溜まってるものを出しながら徐々にクリエイティブになっていくっていうこともあると思いますから。すごくいい活用のされ方をしているんじゃないかなと思います。

アスリートのセカンドキャリア問題

(藤田)途中でキャリアの話を少しされましたよね。アスリートのセカンドキャリアについて、なにか課題感をお持ちですか?

(山田さん)特にフェンシングに関して、僕は課題が山ほどあるなと思っています。フェンシングの選手のほとんどは、アスリート社員制度のなかで正社員として採用してもらうんですけど、競技に集中している間は週1出社くらいなんですね。だからほとんど出社することもなく、ずっと競技中心になっているんで、あまり所属する会社のことも知らなければ、働くということに対して意識を向けたことが全然ない子たちも多いんです。

いざ引退するってなった時に、「自分に何ができるんだろう。どうすればいいかわからない」と迷ってしまって、これまでの経験を活かせないような人もたくさんいます。それがすごくもったいないですし、一番の課題だと思っています。

(藤田)競技人生から働く人生にどういう風にうまく変わっていけばよいのか、もしくはそのためにどういう準備が必要かがわからない人が多いという感覚なんですかね。

(山田さん)準備のために、僕は競技を含め今していることをしっかり自分の言葉にすることがすごく大切だと思ってます。目標設定はアスリートに限らず誰しもすることだと思うんですけど、そういう目標や積み上げてきたものをしっかり自分の言葉にしていけば、自分の武器になると思っています。それを言葉にしないと、フェンシングを自分の武器にできないですし、もったいないなと思います。

そのうえ、現役時代はいろんな人と出会えることも本当にすごく貴重な機会なのに、そこで練習場と家の行き帰りだけになってしまうのはすごくもったいないです。だから現役世代こそ社会に出ていろんな人と接する、そして自分の言葉を持つということが、セカンドキャリアにおいては重要だと思います。

1/4放送ラジオ番組 ナナコライブラリーエフエム 「日本酒シンガーUinaの吞み口粋酔」に出演

(藤田)ありがとうございます。アスリートをサポートする岡安さんから見るといかがでしょう?

(岡安さん)アスリートって目標を自分で作り上げていく力が強いんですけど、自分の中で完結しちゃうことが多いのかなと感じています。今山田さんが言ってくれたように、言語化するとかアウトプットするっていう習慣があれば、いろんな人が手を貸してくれたりすると思うんですけど、あまりにも閉鎖的になってしまって個人で完結してしまうところがあるので、そこが僕は課題なのかなと思います。

自分のなかだけで閉じないコツ

(藤田)なるほど。素人考えで言うと、アスリートって自分との戦いという部分もあるじゃないですか。どうしても自分と向き合う時間が多いから、そこであえて外に目を向けるっていうのは難しいのかなとも思ったんですけど、なにかコツはありますか?

(山田さん)コツというか、とりあえずみんなプライドを捨てたらいいのになって思います(笑)僕は元々自衛隊所属でやっていて、もっと新しい自分を知りたい、成長したいという想いで外に出たんですけど、人と会って成長することって多くて、話すことで気づきであったり自分が何をしたいのかが分かるようになってきたんです。それこそ岡安さんに相談して、自分が本当にしたいことは何なのかが見えるようになりました。

プライドのせいで自分の考えや想いを発せないよりは、どんどん自分のしたいことを発信した方が、それに協力してくれる人も集まりますし、本当に自分がしたいことや引退した後自分に何ができるかということも、どんどん見えてくると思います。

(藤田)たしかに山田さんは明らかに話しやすいですもんね(笑)あとすごくロジカルで分かりやすいなと感じています。プライドという風におっしゃっていましたけど、凝り固まった考えがあるわけじゃなくて都度ご自身で整理しながらやってるんだろうなっていうのすごく感じます。昔からそんな感じなんですか?

(山田さん)いや、僕は元々はコミュ障で、人と喋れないし目も合わせたくない性質でした。でも大学2年生になった時に、怖い先輩でいても後輩は誰も相談してくれないなと気づいたんです。それだったらオープンな先輩でいようと、もう思いっきりふざけまくってバカなことやりまくったんです。そしたら「あの先輩なら話しかけてもいいや」ってみんな思ってくれて、後輩も話しかけてくれるようになって。

そうやってバカでオープンな自分を演じているうちに「こっちの方が生きやすいな」って思ったんです。そこから意識するようにはしてて、何も隠さずちゃんと自分で責任持って発言しようと思ってますね。

(岡安さん)何百人とアスリートを見てるんですけど1番大人だなって思いますね。人格者ですし後輩からの慕われ方もすごいですし、本当にいろんなアスリートのみなさんにも見習ってもらいたいと思いますね。

(藤田)アスリートの方だけでなく、普通に生活されてる方でも生きづらいと感じている方はおられると思うんですよね。岡安さんからみて、どうすれば山田さんみたいに生きやすい自分を見つけられると思いますか?

(岡安さん)山田さんはバカになれっておっしゃっていましたけど、会社員としてしっかりやられている方がバカになるってすごく難しいと思うんです。でも、自分の欠点もさらけ出せるような余裕がないと生きづらいというのはあると思うんですよね。そういう意味で、メリハリをつけられたり、話しやすい雰囲気がつくれると、自分で抱え込んだりすることがなくなるのかなと思います。

(藤田)後輩から声かけられやすいようにしているとおっしゃっていましたけど、後輩の方は相談しやすい雰囲気の方がパフォーマンスとかもいいんですか?

(山田さん)そうですね、競技に関して相談されることはあまりないんですけど、プライベートのことであったり進路であったり、今後のことをいろいろ相談してくれる子は多くて、相談したあとはみんなすごくすっきりした顔はしてくれます。

みんな僕のことを本当にフラットに対等な目で見てくれているからこそ、しっかり相談してくれるんだと思います。そこに変に上下関係をつけすぎると相談もしてくれないですし、本音で話してくれるからこっちも本音で返して、それで2人で考えてっていうのちゃんとできていると思います。

僕は後輩とか年齢とか関係なく普段から意識していて、例えば小さい子と喋る時はしゃがんで目線を合わすとか、そういう意識を普段からしています。そうすることで相手も話しやすいっていうのもあると思いますし、その結果相手が笑顔になってくれればそれが一番いいなと思ってやってます。

フェンシングの魅力とは

(藤田)この機にフェンシング自体のことを少し語ってもらいたいです。

(山田さん)フェンシングってなかなかその辺にないスポーツなんですけど、オリンピックなどもあってちょっと有名になりつつあります。それでもやっぱりやる環境がめちゃくちゃ少ないっていうのは確かなんですよね。せっかくちょっと興味を持ってやってみたくなってもやれる環境がないので、それはフェンシングの課題ではあるんですが、やるとめちゃくちゃ面白いんですよ。

フェンシングはフルーレとエペとサーブルという3種目があるんです。どれが1番面白いかって言ったら、僕がやっているエペが1番面白いです(笑)エペっていうのはキングオブフェンシングと言われていて、世界的に見ても1番競技人口が多いです。分かりやすいんで1番流行ってるってもあるんですけどね。

今後僕はいろんなイベントなどで、やりたいときにやれる環境がないという課題を解決していこうかなと思ってます。近くにフェンシングができるところがある人はぜひ遊びに行ってみてください。僕にメッセージをくれたら一緒に行きます!

(藤田)それはすごいですよ(笑)素人なので教えて欲しいんですけど、場所があればフェンシングはできるんですかね?

(山田さん)どこでも大丈夫です。最近だとワイヤレスの設備とかもあるので審判機とかは必要ないんですけど、でもフェンシングの道具はまだちょっと高いんですよ。そのあたりも考えながらやっています。

(藤田)そうなんですね。実は今日は山田さんデザインのTシャツを着てきました!

(山田さん)これ実は岡安さんデザインなんですよ(笑)

(藤田)そうなんですか!でもぜひデザインとかもされてみたらいいと思いますよ。

(山田さん)たしかにそういうものを作るのも好きです。僕は毎年地元の三重県鳥羽市で山田優杯という大会を開催しています。小中学生くらいを対象にした大会なんですが、毎回コンセプトを決めてやっていて、前回はSDGsに触れてもらいたいなと思って、いろんなイベントも合わせてやったんです。Tシャツなどのグッズも制作したんですが、SDGsを謳っていながらポリエステルで作ってしまって…(笑)なんか違うなと思ったので、今回はスウェットを作るんですけど、僕が仲良くさせていただいている繊維の会社にどうにかお願いできないかと頼んでみました。そしたら切れ端を集めて服を作れるよと言っていただいたので、国産で大会ロゴを入れたオリジナルのスウェットを作ろうとしています。普通に作ったら1着2万円くらいになるんですけど、かなり安くしてもらいました。この他にもいろんなことをやっているので、ぜひお越しください!

何事も“楽しむ”ことを忘れないで

(藤田)非常にいいお話を聞かせていただきました、ありがとうございます。アスリートの方に向けても当然そうなんですけども、一般の方に向けてもより良いパフォーマンスでいい人生を送るために、何かアドバイスがあればお願いします。

(山田さん)僕が普段意識してるのは、何事に対しても“楽しむ”っていうことを忘れないようにしています。楽しむという感情は学習能力で、成長するうえで1番大事だって言われているんですね。だから僕は楽しくなるような工夫をする努力家なんですよ。人より筋トレをやってるとか、練習をやってるってわけじゃなくて、練習量も筋トレの量も普通でも、楽しむことを常に工夫してやってるからこそ、自分が今どういう状況にあるかが明確に見えて、次のステップに進むっていうのが常にできています。

自分の楽しいっていう感情をコントロールするためには、自分自身は何が好きで何をしてる時が一番気持ちが弾むのか、ワクワクするのかを理解することが重要です。そして、楽しさを取り入れながら何かに挑戦していくっていうことが一番いいんじゃないかなと思います。

(藤田)ありがとうございます。サポートされてる岡安さんは、頑張っている人もしくは頑張ってほしいと思う人に対して、どのように接するのが重要だと思いますか。

(岡安さん)頑張ってる人って本当に頑張ってるんですよ。頑張ってるんだけど、周りの人がその頑張ってる人の背中の押し方を知らなくて、アドバイスをしちゃうとか、「それ難しいんじゃない」「やめた方がいいんじゃない」って言っちゃうと、頑張れなくなっちゃうじゃないですか。そこってすごく難しいのかなと思います。僕も話しながら、アドバイスしちゃったかもなと感じることはあるんですけど、そうじゃなくて気づきを促すというか、その人が頑張れるような応援の仕方をしてもらうのがいいと思います。その人自身もいろんなことを言われることがあると思うんですけど、本質を捉えて頑張ってほしい、それを自分の力に変えてほしいと思いますね。

(藤田)ありがとうございます。それでは最後に山田さん一言お願いします。

(山田さん)今日こうやっていろんなお話ができてすごく楽しかったですし、今日しゃべってみて新たな気づきや学びがありました。なので何事も積極的に参加してNOの理由を探さない、何でもYESでやっていったら楽しいことはいっぱい見つかるんで、ぜひYESマンになってください。ありがとうございました。

(藤田)本日は貴重なお時間どうもありがとうございました!

*Youtubeではインタビュー動画を公開しています!ぜひご覧ください。


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