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日本総研の小島さんに聞く!定年退職後にモチベーションを維持するには

 こんにちは!Smart相談室の藤田です。
今回は株式会社日本総合研究所で、多様な働き方に関する調査研究をされている小島明子さんに、定年退職後のキャリアについてお話を伺いました。さまざまなデータや調査に基づいて、中高年社員のキャリアと定年退職について考えていきます。

小島 明子(こじま あきこ)
株式会社日本総合研究所創発戦略センター スペシャリスト

1976年生まれ。民間金融機関を経て、2001年に株式会社日本総合研究所に入社。多様な働き方に関する調査研究に従事。東京都公益認定等審議会委員。厚生労働省労働者協同組合促進モデル事業企画書等検討・評価委員会委員。主な著書に、『中高年男性の働き方の未来』(金融財政事情研究会)、『女性と定年』(金融財政事情研究会)、『協同労働入門』(共著・経営書院)。


小島さんが語る「定年退職後のキャリア」

1.高年齢者雇用安定法の動向

 2021年4月には、高年齢者雇用安定法が改正され、従業員に対する70歳までの雇用確保措置が努力義務となりました。

具体的には、

(1) 70歳までの定年引き上げ
(2) 70歳までの継続雇用制度の導入
(3) 定年廃止
(4) 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5) 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に、事業主自ら実施する社会貢献や、事業主が委託、出資(資金提供)等を行う団体の社会貢献事業に従事できる制度の導入

が求められています。

加えて、2025年4月には、「65歳までの雇用継続」に関する経過措置が終了し、企業は、「65歳までの定年引き上げ」「定年制の廃止」「65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入」のいずれかを導入することが求められます。

2.役職定年で低下するモチベーション

 社会全体では、企業で長く働き続けられる環境が提供されつつ、就業意欲が高い人にとっては良いことだといえます。一方で、役職定年によって活躍の場が限定的となることで、モチベーションが低下してしまうことが課題となっています。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査を踏まえると、役職を降りた後の変化として主に4つの特徴が指摘できます。これらの特徴には、役職定年に潜む問題が示されています。

図表 役職を降りた後の「会社に尽くそうとする意欲」の変化

出所:高齢・求職者雇用支援機構「65歳定年時代における組織と個人のキャリアの調整と社会的支援ー高齢社員の人事管理と現役社員の人材育成の調査研究委員会報告書ー」(平成30年度)をもとに日本総合研究所作成
出所:高齢・求職者雇用支援機構「65歳定年時代における組織と個人のキャリアの調整と社会的支援ー高齢社員の人事管理と現役社員の人材育成の調査研究委員会報告書ー」(平成30年度)をもとに日本総合研究所作成

上記の調査を踏まえ、各特徴については以下のように考察できます。

特徴① 就いていた役職が高い経験者ほど、「会社に尽くそうとする意欲」が低下する傾向が強い。
→就いていた役職が高ければ、役職定年後はそのギャップに悩み意欲が低下。

特徴② 役職をおりた後の職場や職種として、「職場と職種の両方が異なる」で「会社に尽くそうとする意欲」が低下している者が多くなっているのに対して、「職場と職種の両方が同じ」経験者で低下している者が少なくなっている。
→役職定年後は、今までやってきた仕事や職場が変わることが多いが、新境地へのチャレンジどころか、むしろそのことは意欲の低下に。

特徴③ 役職をおりた後の主な仕事・役割別にみると、主な仕事・役割が「社員の補助・応援」を行っている経験者ほど、「会社に尽くそうとする意欲」が下がっている者が多くなっているのに対して、「経営層・上司の相談・助言+所属部署の後輩社員の教育」を行っている経験者ほど、その傾向は低いこと。
若手と一緒に手を動かす仕事では意欲が低下するが、教育係やアドバイザーであれば意欲は下がらない。

特徴④ 50歳代前半で役職をおりた経験者に比べ、40歳代で役職をおりた経験者ほど、「会社に尽くそうとする意欲」が下がっている者が少なくなっている。
早いうちから、役職をおりてキャリアを考え直す機会があれば、意欲は低下しない。

3.役職定年者に重要なこと

 前述した調査を踏まえると、高い役職の経験者ほど、役職定年後のギャップが心理的に受け入れにくいことが窺えます。副業・兼業や出向等を通じて、さまざまな立場を経験したり、趣味の世界などでフラットな人間関係づくりをもっていれば、そのギャップに悩むことも少なくなると考えられます。

 また、「社員の補助・応援」の仕事ではモチベーションが下がり、「経営層・上司の相談・助言+所属部署の後輩社員の教育」の仕事では意欲が低下しづらいという結果を踏まえると、今までのキャリアに対するプライドもあるため、若い上司のもとで、いちメンバーとして働く難しさも読み取れます。実際、私自身もミドル・シニアの働き方について調査していくなかで、高齢化するにしたがって、若手の教育係になりたがる人は多いと聞きます。

 しかし、組織側の事情を踏まえれば、すべての役職定年者をアドバイザー的な役割にするのでは、適正な配置とはいえません。労働人口が減り、現場の人手が足りなくなる可能性を考えれば、教育係ではなく、一緒に手を動かしてほしいというのが若手の本音ではないでしょうか。

役職定年を迎えた後、肩書がなくなった状態で組織や若手の事情と折り合いをつけながら働き続けるためには、専門性を高めることに留まらず、年齢を経てもフラットな関係でいるコミュニケーションの姿勢や、若手と一緒に汗をかいて仕事をし続ける姿勢が必要なのだと感じます。

何をしていて、何ができて、どんな貢献をしているのか・・・

 ここからは藤田がお届けします。

 私は、2001年4月に新卒で会社勤めを始めました。それから20年以上が経ち、当時、トレーナーとしてお世話になった上司、先輩方が、定年を迎える姿を見ています。

お会いする機会もあるのですが、嬉々として働かれている方もおられれば、そうでない方もおられます。何が違うのかな?と思いながら、世間話をするのですが、嬉々として働かれてる方の多くは、

・ご自身が何をされていて
・何が得意で
・どんな貢献をしているのか

をお話いただくんです。その内容は、これまでのキャリアと関係ある方もおられれば、そうでない方もおられる。

小島さんが書かれている、

専門性を高めることに留まらず、年齢を経てもフラットな関係でいるコミュニケーションの姿勢や、若手と一緒に汗をかいて仕事をし続ける姿勢が必要なのだと感じます。

ということを実践されている方が、嬉々として働かれているのかなぁと腹落ちしました。

定年退職(役職定年)によって雇用形態がリセットされるわけですが、個人としてのキャリアは続くわけですから、そのキャリアの節目に対応しなければならないんでしょうね。

そう考えると、定年退職(役職定年)は転職と同じようにキャリアチェンジのタイミングなので、自分のキャリアを見直す時と踏まえて、現実に対応することが必要なんだと思います。

 ちなみにSmart相談室の相談者さまのなかには、定年退職を迎えるにあたってSmart相談室を利用して、前向きな気持ちになったとお話しくださる方もいます。

お話しするだけでもスッキリしたり、今まで見えていなかったものが見えてきたり、行動や関わり方が変わっていったり。定年退職という節目だからこそ、人に相談することが切り替えにも役立つと思います。まずは一度、相談してみてはいかがでしょうか?


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