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日本はメンタルケア後進国? データで見る世界と日本の現状

 こんにちは、Smart相談室ライターの稲葉です。 

 今年でサービス提供3周年を迎えたSmart相談室は、これまで13,000件を超える相談を受け、働く人のメンタルケアを支援してきました。カウンセリングなどの相談窓口を使うのが初めてという方も多く、「何でも相談してイイよ」というコンセプトが相談のハードルを下げていることを実感しています。

一方で、「こんなこと相談していいのかな⋯⋯」「カウンセリングを受けるほどじゃないかな⋯⋯」と迷っている人も、まだまだ多いのではないでしょうか。

近年、日本でもメンタルケアの重要性が見直されつつありますが、欧米諸国と比べるとまだまだ後れをとっている印象です。そこで、「世界から見た日本のメンタルケア」や「メンタルケア先進国の取り組み」について調べてみました。


日本のメンタルケアは世界最下位!?

 日本はメンタルケア後進国と言われていますが、本当にそうなのでしょうか? いくつかデータを探してみました。

アクサ生命保険会社が2024年5月に公開した「2024 Mind Health Report」によると、メンタル不調に悩んでいる日本人の割合は22%。調査対象となった16の国と地域のうち最多でした。反対に「メンタルが良好」と答えた人はわずか12%で、最下位となっています。

参照:https://www2.axa.co.jp/info/news/2024/pdf/240531.pdf

 不調にもかかわらずケアをせず、専門家のカウンセリングを受ける人が少ないのも日本の特徴です。J-NET21が20代〜60代男女を対象に行った調査では、カウンセリングを利用したことがある日本人は全体の6%に留まりました。

対象年齢が少し違いますが、欧米諸国のカウンセリング利用経験率に関する調査によると、オランダが55.7%と最も高く、ドイツ46.3%、オーストラリア43.5%、アメリカ40.3%、イギリス32.8%。日本に比べて圧倒的にカウンセリングが普及していることがわかります。

参照:https://j-net21.smrj.go.jp/startup/research/service/cons-counseling.html, https://www.statista.com/statistics/1328892/

「心が元気だからカウンセリングの必要がない」なら問題ありませんが、不調を自覚しているのに相談できない状況は、望ましくありませんよね。

なぜ日本人はカウンセリングを利用しないのか

 海外に比べて日本のカウンセリング利用率が低いのは、一体なぜなのでしょうか? 「日本におけるメンタルケアの障壁」という論文では、「メンタルケアの必要を感じたが、サービスをすぐに受けなかった理由」として、次の点が挙げられています。

●放っておけば問題が解決すると思った
●たいした問題ではないと思った
●自力でどうにかしたかった
●どこで相談すればいいかわからなかった
●時間がかかりそうで利用しにくかった
●スケジュールなどの事情で利用が難しかった
●バレたら周りにどう思われるか不安だった

日本社会の風潮として、「人に頼るのは恥ずかしい=自力で解決するべき」という思い込みや、「カウンセリングに通っていることを知られたら、会社や家族、友人にどう思われるんだろう⋯⋯」という不安など、精神的なハードルがあるのかもしれません。

また、「どこで誰に相談すればいいかわからない」「時間やお金がどれくらいかかるかわからない」といった情報不足も、メンタルケアサービスが浸透しにくい原因になっていると考えられます。

メンタルケア先進国は何をやっているのか

 では、日本よりもメンタルケアが進んでいる欧米諸国では、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

メンタルヘルスが優れている国はどこ?」という分析では、長時間労働の割合や余暇の時間に基づいたワーク・ライフ・バランス、政府によるメンタルケアへの支出額などに基づき、経済協力開発機構(OECD)に加盟する35か国がランク付けされました。日本は韓国と並び27位です。

参照:https://www.william-russell.com/blog/countries-best-mental-healthcare/

この分析でトップ3となったスウェーデン、ルクセンブルク、ノルウェーについて紹介します。

🇸🇪スウェーデン

 北欧は福祉先進国のイメージがありますね。その中でもスウェーデンは2年連続トップでした。特に長時間労働(週50時間以上)をしている人の割合が少なく、平均して毎日15時間の自由時間があります。

2016年には政府が「予防と意識向上、ケアへのアクセス、社会的弱者の重視」に焦点を充てたメンタルヘルス戦略を導入しました。愛する人を失った人、LGBTQ+の人、ハラスメントに悩む人など、悩みに応じて気軽に利用できるホットラインも用意されています。また、10歳〜24歳までの若年層向けプログラムにより、抜本的なメンタルヘルス意識改革が行われています。

🇱🇺ルクセンブルク

 ルクセンブルクは昨年度のランク外から2位に急浮上しました。ルクセンブルクは人口約67万人の小国ですが、米Forbes誌の「裕福な国ランキング」で1位に輝いています。その豊かな資金をもとに、コミュニティに重点を置いたメンタルケアサービスを充実させてきました。

医療費全体の約84%が公的資金でまかなわれており(日本は37.9%)、メンタルケアサービスが総医療費の13.4%を占めています。病院での治療のほか、健康増進や予防にも力を入れており、職場での心の問題を最小限に抑えるための特別プログラムも開始されました。2019年に11%だった国内のうつ病率は、2023年には5%まで下がっています。

🇳🇴ノルウェー

 世界保健機関(WHO)の調査によると、ノルウェーは1人あたりの精神科医の数が世界一多く、GDPの1割が保険医療に費やされています。施設ではなく家族中心のケアを推進するなど、革新的なアプローチの先駆けにもなりました。一方で、ヨーロッパ諸国の中では自殺率が比較的高いなどの課題も抱えています。

2023年に「メンタルヘルス段階的拡大プラン」が策定され、政府はメンタル不調の予防を重視した対策に億単位の投資を行いました。これにより、カウンセリングなどのサービスを受けるハードルが低くなってきていることが評価されています。

その他の国

 その他の国にもさまざまな取り組みがあります。たとえばイギリスでは、2008年にNHKトーキングセラピー(旧:IAPT)という国家プロジェクトが始まり、国民保険制度により無料でカウンセリングを受けられるようになりました。多数のセラピストを養成したことも一因となって、サービスの利用者が急激に拡大しています。

 アメリカでは企業の9割以上が「従業員支援プログラム(EAP)」を導入しており、従業員とその家族が無料で専門家に相談できます。プライバシーに配慮されており、相談について上司など周りの人に知られる心配はありません。

参考:the U.S. National Institutes of Health's National Library of Medicine (NIH/NLM)

心のモヤモヤは早めに相談しよう

 メンタルケアは日本だけでなく世界中の課題であり、各国が改善のための取り組みを続けています。いろいろリサーチしてみた結果、全体的に「メンタルケアの重要性をしっかり認識すること」「深刻な状態に陥る前に、気軽に相談できること」が重視されているように感じました。

 適切なメンタルケア対策が講じられなければ、20年間の世界経済に最大16兆円の損失が出るという研究もあります。何より、メンタルが健康でないと毎日が楽しくないですよね。「なんとなくモヤモヤするな⋯⋯」という状態が続くと、だんだん身体の調子も悪くなってきて、気づいたときには深刻な問題に発展してしまう可能性もあります。

「ちょっとしたことなんだけど、こんなこと話していいのかな?」
「誰かに相談したいけど、身近に聞いてもらえる人がいない⋯⋯」

いきなり専門機関を探してカウンセリングを受けるのは、やはり少しハードルが高いかもしれません。そんなときは、「何でも相談してイイよ」「調子が悪くなくても相談してイイよ」のSmart相談室を活用してください。
うまく言語化できないモヤモヤも、経験豊富なカウンセラーやコーチが解消のお手伝いをしてくれます。できるだけ不調になる前の段階で吐き出すことが、メンタルヘルスを保つために重要なので、気軽に相談してみてくださいね。


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