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MCC取得のための"2500時間"が足かせにならないように 〜Coaching Plus One〜

 こんにちは!Smart相談室CEOの藤田です。
この記事は連載企画「『コーチングとはなにか?』ICF認定スクールに聞いてみた」の一環として、Coaching Plus One 代表の猪俣さんにインタビュー取材させていただいた内容をまとめたものです。7000字を超える大作となりました!ぜひお時間のある際にご一読ください。

Coaching Plus Oneのロゴ

MCCを取りたいけど、ハードル高く感じるPCCの方をサポートしたい

(藤田)猪俣さん、本日はよろしくお願いします。

(猪俣さん)よろしくお願いします。

(藤田)Coaching Plus Oneさんはレベル3(*)のスクールさんですが、コーチングの定義に特徴などはありますか?

*レベル3とは、国際コーチング連盟(ICF)の認定基準のことで、レベル3の教育およびトレーニングプログラムを修了すると、認定資格取得の要件を満たしている場合、マスター認定コーチ(MCC)資格取得を申請することができます。詳細は下記URLをご確認下さい
https://icfjapan.com/post/credentials/566

(猪俣さん)特別なものはなくて、ICFが提示しているコーチングの定義をそのまま採用しています。

(藤田)コーチを育成する目的はいかがでしょうか?特にCoaching Plus OneさんはMCCのコーチを養成するスクールだと思うので、何か特別な想いはありますか?

(猪俣さん)漠然と社会を良くしたいというようなイメージではなく、具体的に「MCCになりたい」、「MCCレベルのコーチングができるようになりたい」と願うコーチを支援する目的でスクールを運営しています。

ICFの資格って、プロフェッショナル認定コーチ(PCC)取得までが500時間、MCC取得までが2500時間のコーチング実施実績が必要なんですね。そこには、2000時間の差がある。ICFは何をもって2000時間の差を設けたのでしょうか。実は過去、PCC取得は750時間の実績が必要だったんです。PCC申請のバーは下がった。MCCはそのまま。PCCとMCCの差を広げる形で変化した。

私は、ICFはPCCのコーチを増やしたかったのではないかと思っています。結果として、PCCを取得された後に、多くの方はMCCを取りたいと思うけれども、ハードルを高く感じられるPCCの方が多くいらっしゃる。この状態や想いに応えていきたいというのがCoaching Plus Oneの目的です。

MCCになるために、コーチとしての「学びのプロセス」を大切に

(藤田)PCCのコーチを支援するうえで大切にされていることはありますか?

(猪俣さん)あります。コーチとしての学びのプロセスを提供することですね。

コーチングスクールでプログラムを受講する、セッションごとにこつこつとコーチングのスキルやプレゼンスを磨く、知識をインプットする。そのように研鑽を積まれているコーチの方は多くいらっしゃいます。しかし、そうした自分自身のみの視点の積み重ねで、ICFが提示するMCCレベルのコーチング、MCCのコーチが醸し出す価値を体現するまでには、なかなかいかないものです。

 また、総合的にその学びはICFの世界基準にあった学習プロセスになっているかということも同様です。コーチとしての成長は、セッションを実施するだけではなく、知識を学ぶだけでもなく、内省するだけでもない、戦略的かつ体系的なプロセスによって実現されます。そして、コーチングスキルが上達した、コア・コンピテンシーが何を伝えているのかがわかるようになった、クライアントの方たちから感謝された、という感覚を重ね、それを喜びに感じつつ成長していきます。この「コーチングの学びのプロセス」を自ら進められるようなサポートを提供しています。

(藤田)その内容をスクールとして確立されているということですね。

(猪俣さん)当初は、スクールにしようとは思ってなかったんですね。そういう学習プログラムがあるといいだろうと思って、気楽な気持ちでMCCの世界観をイメージしたセミナーを開催していました。ちょうどそのとき、ICFで教育機関のレベル分けの話がありました。それまで既に企画していたプログラムはLevel3相当になっているのではないかと思い、新たに手を加えてICFに申請したところ、有難いことにLevel3認定を受けたというのがこれまでの流れですね。現在は、認定スクールとして運営しています。

(藤田)MCC取得までのサポートをしたい、が始まりなんですね。

(猪俣さん)そうです。気持ちとしては、MCC取得に向け、成長の道のりが提示できるものを提供したい、というものです。PCCまではコーチングスキルを使ってコーチングをするという意識でよいのですが、MCCはそういうものではない。クライアントをコーチングをするのではなく、クライアントを人として扱い、その人を広く深く多様性の眼差しをもって見るという感覚が必要になってくる。コーチングスキル以上のものだと思います。その過程に、2500時間というセッション時間が必要だという解釈ですね。このプロセスをコーチが一人で学ぶよりも、効果的、効率的に学習できるように支援しています。

(藤田)ICFの認定はすぐに取れたんですか?

(猪俣さん)いや、大変でした(笑)。ICFに申請する際に、かなりの数の申請項目があるんですよ。そこで初めて気付きました。あっ、これはICFが認定機関としてCoaching Plus Oneが耐え得るものなのかどうかを判断する審査なんだって・・・。学びました(笑)。

「心を揺さぶるような質問」「価値あるセッション」と願うばかりに・・・

(藤田)PCCのコーチが、MCCを取ることに対する想いというのは、昔からあったのですか。

(猪俣さん)そうですね。私は以前からPCCのコーチのメンターコーチングを行っていました。なので根本には、そのコーチたちを支援したいという想いはありました。

その活動のなかで、やっぱり2500時間の壁は厚い。500時間の実績からさらに2000時間、つまり2500時間まで到達するにあたって、長い時間が必要です。その過程のなかで、コーチングの「癖」がついてしまうことも多々あります。自分が使いやすい質問やフィードバックやアクノレッジを多用するようにもなります。

コーチであれば、おそらく誰でも「クライアントの心を揺さぶるような質問がしたい」「価値あるセッションをクライアントに提供したい」と願うでしょう。しかし、残念ながらクライアントの心に響かない対話になってしまっているコーチングもたびたび見かけます。

それは何が原因かというと、能力不足や知識不足でなくて、そういうことについて「フィードバックを貰う機会が今まであまりなかった」ことなんですね。自分が行なっているコーチングを客観的に振り返り、修正を図る機会がなかったから。その機会を創出したいという気持ちが、学習プログラムの提供につながったと思います。

自分の「癖」に気づき、その効果を理解する

(藤田)本論とは逸れますが、コーチにとって「癖」は良くないんですか?

(猪俣さん)「癖」に気づくことが大切なんですね。その「癖」がコーチングを通じてクライアントにどのような効果をもたらしているのかを含めて理解することでコーチングの質が変わります。それはコーチの成長にもつながります。

例えば、「なるほど」という口癖がある。「あなたの言っていることに同意していますよ」という意味で使っているんですが、クライアントからしたら「私の話をあまり聞いていないのかなぁ」なんて感じられてしまうこともあるんです。使い勝手が良い言葉ほど、そうなりがちですね。

(藤田)なるほどーーー(笑)

(猪俣さん)そんなときは「一度『なるほど』を使わないでください」と伝えています。ダメ、というわけではなく、その癖と効果に気づいてもらうためです。本来の効果を狙って使うのは良いわけですから。

 「なるほど」に限らず、クライアントがMCCを目指すのであるならば、何について話しているのかによくよく心を傾けてほしいです。考えについてなのか、取り組んでいることなのか、感じ方なのか、価値観なのか、コーチである自分は何について「なるほど」と思ったのかというのを、コーチは自分の言葉で話してほしいんです。そこを省略しがちなんですが、とても大切なことです。同じように、聞き方の癖、質問の癖、いろいろな癖があります。それを一つひとつ確認していきます。

青木理恵MCCと二人で運営していることの意味

(藤田)プログラムの特徴はありますか?

(猪俣さん)青木理恵MCCと私が二人で運営しているということです。この二人が北極と南極くらい違う。これがプログラムや学び場含めて全体にとてもよい影響を与えています。

コーチへのフィードバックが1パターンではない。同じ事象でも異なるフィードバックを受講者は得られる。多面的に事象を捉え、クライアントに提供する価値の可能性の幅を広げることができる。だから、コーチにより多くの気づきを与えられる。どちらか1人だけでは提供できないものを生み出しています。

そもそも私たち二人のように、MCCホルダーでもいろいろなコーチがいて、それぞれが醸し出す雰囲気も違うんです。それをスクールとして提供できている点は特徴だと思います。

具体的には、質問のアプローチ、フィードバックの仕方、何を聞いてるのか、何にアンテナを立てているか、セッションの構成などが違う。でも、ICFのMCCレベルという枠を大切にしている。この感覚を体得できるんですね。

真摯なフィードバックと対等な関係性

(猪俣さん)特徴の2つ目は、運営者のスタンスですね。私たち運営者は、受講者と仲間であり、対等であると考えています。受講者の方は、自分のコーチングスキルとプレゼンスを上げたいという方たちです。なので、メンター的に関わります。コーチングのスキルの使い方やアプローチについて、駄目なものは駄目といいます。でも仲間であり、対等な関係です。ここが特徴です。

MCCを養成するためのプログラムですが、ICFが期待するレベルに到達しているものは強みとして、到達していないものは開発領域として、しっかりフィードバックします。ICFのアセッサーがチェックする項目に対して、ここはOK、ここはNGという具合に、細かく観察し分析しています。受講者としては、良いことも悪いことも明確にフィードバックされるわけですから、負荷がかかります。それに耐えられるのは、関係が対等だからです。逆にいうと、それだけシビアにトレーニングし、フィードバックをしているということだと思います。

フィードバックに関しては、録音セッションを提出していただいて、その内容を検証することにエネルギーをかけています。複数回提出していただいて、成長しているところや変化も確認しています。私たちとしては、とてもパワーが必要なのですが、受講者に対する効果は絶大なので、特別な想いをもって取り組んでいます。

スキルの意図を理解して、スキルを使う

(猪俣さん)特徴の3つ目は、スキルと効果の紐づけを徹底していることです。コーチングは、さまざまなスキルを活用します。そのスキルが、コーチングにおいてどのような効果をクライアントにもたらすのかというところまでプログラムに盛り込みます。スキルの意図を理解したうえで、スキルを使えるようになることを目指してます。

例えば、積極的に傾聴することで何が起こるのか、より大きな主題に目を向けることで何が起こるのか、今の気持ちを聞くとことで何が起こるのか、その質問を投げかけることでどんな効果があって、何を期待するのか、などです。

クライアントを観察しながら、コーチが自分自身を観察する

(藤田)受講者さんに、どのようなことを大切にしてコーチングをするように伝えられていますか。

(猪俣さん)クライアントをしっかりと観察するように伝えています。観察し、洞察することで、クライアントの心に起きていることに迫るようにと。バーバルなものだけでなはく、ノンバーバルなものから、クライアントの感情に触れるようにすることが大切です。

その過程で、クライアントのビリーフや価値観を察し、心で起きていることが、どのように行動に影響しているのかを理解していきます。また、その過程では、コーチに自己観察することを薦めています。自分がコーチングをしている時に自分自身のなかにどんな反応が起きているのか。それを上手くコントロールすることがとても大事です。

例えば、私には「社長は社員の悪口を言うべきでない」というビリーフがあります。実家の家業や、銀行勤めの経験から知らず知らずのうちに「そうあるべき」と思っているものです。そのようななか、クライアントが社長さんだったとして、セッションで「社員がね、やる気がなくてさ」なんて聞くと、イライラっとくるんです。そうなると、相手の話が聞けなくなる。クローズドクエスチョンが増えちゃったりね。あー、これは自分の「こうあるべき」を軸にクライアントに質問しちゃっているなぁ、とか。

コーチングに違いを持ち込む

(藤田)価値観を押し付けるような形になるんですね。

(猪俣さん)そうなんです。でも、クライアントと自分の価値観の違いはすごく大切なんですね。クライアントと価値観が全く同じだと、違和感を感じないんですよ。「そうだよね」と共感したり同感したりの繰り返しで終わってしまう。コーチングでは、違いを持ち込むことは大事なことです。

クライアントの視点と違う視点を持ち込んで、クライアントがより良い選択できるようにするんです。違いが持ち込まれなければ、クライアントは現状維持の未来を作り続けるんですよ。だから、クライアントの価値観が自分と同じだなっていうことも気づくことも大切です。

(藤田)ありがとうございます。具体的なプログラムは、数ヶ月に及ぶのでしょうか?

(猪俣さん)はい、プログラムは10か月に及びます。その間に10回のクラスが開講され、並行して実際のコーチングセッションについてのメンターコーチングも行います。
具体的な講義の内容は下記のHPに掲載していますので、ご確認ください。

仕事に対して自分なりの意味付けができることが重要

(藤田)企業がコーチングを取り入れることによるメリットを教えてください。

(猪俣さん)ワークエンゲージメントが高くなります。私は、ワークエンゲージメントを、「仕事にやりがいと誇りを持って、働くことを通して成長していくこと」と捉えています。そのうえで、個人が仕事に対して自分なりの意味付けができていることが大切だと考えています。

コーチングを受けることによって、自分は何者なのか、何が好きで何が嫌いで、何をしたいと思っていて、何は避けたいと思っているのか、それはなぜなのか。そのようなことを働く一人ひとりが理解していることに大きな意味があります。その結果、自分と仕事の関係性が見えてくる。

そのプロセスがあってこそ、どんな仕事がしたいのか、したくないけれども、それをすることで自分にとって5年後、10年後、どんないいことがあるのか。いや、5年後、10年後から見たらもう思い切って違う仕事をした方がいいんだとか、そういう選択に繋がるでしょう。コーチングは、そのプロセスを助けてくれます。

(藤田)ありがとうございます。とてもよく理解できました。

(猪俣さん)こちらこそ、ありがとうございました。Coaching Plus Oneでは、MCC取得に向けて様々な情報を発信しております。よろしければ、下記からご確認下さい。

●YouTubeチャンネル
国際コーチング連盟マスタ―認定コーチの青木理恵と猪俣恭子が、コーチングの本質に迫ります。 コーチング上達のセオリーはもちろんのこと、幸せで充実した人生のヒントも見つかるかも!詳細は下記よりご確認下さい。

●フェイスブックページ
最新情報は、Coaching Plus Oneの公式フェイスブックページでも発信しています。下記リンクからご確認ください。

インタビュイー紹介

Coaching Plus One 代表 猪俣 恭子さん

猪俣 恭子(いのまた・きょうこ)
Coaching Plus One 代表
 

国際コーチング連盟(ICF)マスター認定コーチ
一般財団法人 生涯学習開発財団認定マスターコーチ
Coachacademia認定メンタークラスコーチ
米国CCE,Inc.認定 GCDF-Japan キャリアカウンセラー
キャリアコンサルタント
アンガーマネジメントファシリテーター
研修実績:約1,950(約22年間)
コーチング実績:約4,600時間(18年間)

1965年生まれ。
中央大学卒業後、地方銀行に7年間勤める。
営業店での窓口業務を経て、人事部にて社内研修に従事。女子行員リーダー研修・窓口応対研修・新人指導者研修・ビジネスマナー研修の企画運営、および講師を担当。その後、銀行を退職。家業の印刷会社に後継者として勤務。後継者として現場に立ち、社員の育成に務める。その傍ら、2006年に起業し、家業の整理後はstory Iに専念。組織の経営者層・管理職、・リーダー層に向けてのリーダーシップトレーニングを通し、主体的な組織づくりを行う。

Coaching Plus Oneについて

Coaching Plus Oneのロゴ

 Coaching Plus Oneは、コーチングを通して人が「自由な表現者」
そして「パワフルな思考者」に進化・成長していくことを応援します。わたしたちCoaching Plus Oneは、国際コーチング連盟が定める「コーチのコア・コンピテンシー(※)」を体現したコーチングを、世の中に届けます。そのために、わたしたち自身もコーチをつけ、コーチングを行い、コーチングを真摯に学び続けます。

Coaching Plus OneのHPより抜粋

*「『コーチングとはなにか?』ICF認定スクールに聞いてみた」記事一覧はこちら


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