【人材研究所 曽和代表へインタビュー】「組織を見立て、未来を描く」ことが、急成長フェーズの人事にとってのコアである。
こんにちは、Smart相談室 Corporate責任者のまゆこです。
昨年大好評だったカミナシさん、セルソースさんとの企画に続き、第二弾のコラボ記事をお送りします!
今回は人材研究所・代表の曽和さんをお招きし、セルソース・細田さんと私が、それぞれ聞きたいことを聞きまくる、という企画です。
*セルソースさんの記事は下記です!
Smart相談室側で設定したお題は、
「急成長フェーズの人事チームは何をすべきか」
なぜこのテーマを選んだかというと、こちらの弊社CEOの記事でも言及している通り、現在30数名の組織がこれから短期間で100名500名と成長が見込まれています。とはいえ、このような成長角度を未だ経験したことのない私とメンバーであるえだちゃんが、HRオフィス(弊社の人事チームのこと)として何に注力していけば良いかということを、人事の第一人者である曽和さんからヒントを得たく、テーマとして選びました。
知識はもちろんのこと、ご経験豊富な曽和さんから多くの学びをいただきました。
スタートアップ企業で活躍する人事の方、これから働こうかと考えている方、マネジメント業務の方、経営に携わる方にとっても有意義なお話になっています。ぜひ最後までご一読ください!
――成長する過程とは
『グレイナーの企業成長モデルに合わせた組織づくりを意識せよ』
曽和:まず、人が増えると認知限界が訪れますよね。いわゆる、スパンオブコントロールという言葉でも知られますが、管理職が見れるのは一人あたり6人プラスマイナス1人が普通です。例えば10人以上になったら一人チーム5人とし、階層化の上、中間管理職を配置し、権限委譲を行うなどですね。そして、「権限委譲したからあとはよろしく」とするのではなく、ルールづくりが必要になってきます。そのルールが人事ポリシーと言われるものであったりとして、こうした順番で組織が大きくなってくると思います。
そこで参考にしたいのがグレイナーモデルです。
曽和:最初のステップはマネージャーがほぼメンバーが見える範囲のため、背中でマネジメントをしていきます。全てがインフォーマルでリアルタイム。ルールを決めてというよりは、その都度考えて指示をしていきますね。
2ndステップは行動で管理です。どうすれば良いのかを1から10まで行動のマニュアル化し、それできているか確認をする管理職を置いていく。そうすると、自立性が失われていくんですよね。
3rdステップは一旦マニュアルという型ができた上で結果を見ていくというフェーズです。自由と自己責任とも言われますが、MBOなど目標管理制度ができるのがこの段階ですね。そうすると今度は部分最適思考が強まります。全体に対してというよりも競争の社会になってくるので、横断的資源配分、つまりはヒトモノカネの部分配分が行われていきます。
最後のステップは、そうした部分最適となったものを全体最適にするために文化でマネジメントしていくといった具合です。
ーーグレイナーの成長モデルを参考に気をつけることは?
『大切なのは、型を作り、段階を踏んで成長する過程』
曽和:細かいところはそれぞれありますが、この理論の面白いところは現状に過剰最適化をすると、次のマネジメントスタイルをやらなくてはいけなくなることと、よく見ると自律性と統制をかけるところが振り子になってることの2つですね。
結局、急成長させなくてはいけない場合は、それをどういう風なスピード感で上がっていくのかがが大切だと思います。よくありがちなのは、ステップ1から2を飛ばし、いきなりステップ3を目指すケースです。マニュアルを作成せず、自立性を求めると大体失敗することが多いです。そもそも人間は、自由にしたら自立できるかというとそんなことはないからです。守・破・離という言葉の通り、型があってそれを崩すことはできますが、それがなければ崩すことも破ることもできません。
すると、2ndステップに戻ってルールを作成してからまた進もうというケースは多く見かけますね。規模として500人くらいまでの過程は、その問題点が出ることも予測しながらやっていくのが良いのではと思います。
余談ですが、経営者の方は「自由と自己責任」が好きなことが多いです。するとメンバーもそうだろう・良かれと考え、そのように伝えます。また、才能がある方も、なぜ自分ができるのかどうかということを言語化できないため、このステップを飛ばしがちなのではという私の仮説を持ってます。
急成長するのであれば、結果的に回り道をしないためにも、まずは型を作った上で拡大を進めるのが良いかもしれませんね!(ベンチャーだと他の方に嫌がられるかも知れないけど)
ーー成功している会社の特徴はありますか?
『それぞれのステップでいけるところまでやりきってから、次へ』
曽和:あります。このモデルをすごい勢いで駆け上がる会社は、ギリギリまで待った会社という認識です。例えばですが、以前在籍していたオープンハウスでは、500人の規模の時点でルールがありませんでした。人材マネジメント制度もなかったですし、様々な面においてTOPの力が効いてました。強いリーダーシップとマイクロマネジメントで統制をとっていたんですよね。他の人材系の企業やEC系大手の企業でも実は同様のケースが多いです。
小さい会社が文化文化とビジョナリーカンパニーとして行うのは、必要な時にやった方がいいですが、まずはそれぞれのステップでいけるところまでやりきってから、次に進むのをおすすめします。
ーールールはどこまで必要ですか?
『制度がないからマネジメントできないという管理職は、マネジメントスキルがない』
曽和:なければないでできるうちは、なくても良いと思います。例えば、制度がないからマネジメントできないという管理職は、マネジメントスキルがないんですよね。想像していただきたいのですが、日頃からコミュニケーションが取れていて、信頼関係があったら、上司からあまりよくない評価があったとしても齟齬なく受け入れられるんですよね。そして次の成長に生かしていけるんです。その関係性がなければルールや制度がないと言い始めます。
マネジメントは可能な限り進化させない、言い方を変えれば有視界飛行の限界まで行い、それでもジャンボジェットが必要となったら次に進むというイメージですね。
また、2−3年ではマネジメントスキルは上がらない可能性が高いため、マネジメントしなくて済む人を採用したり、マネジメントスキルがなくても組織が回るような仕組み化をすることも念頭に置いてみてください。(こちらの記事も参考になります『HRZine 2019.11.20記事より』)
急成長する会社でマネジメントレイヤーを採用するのは非常に難易度が高く、本当にカルチャーフィットするのか、どんなマネジメントスタイルをとってきたのかをよーく確認する必要があります。「前の会社では・・・」というセリフが多い人はミスマッチの可能性が高く要注意です。
ーー急成長フェーズで人事に求められる役割や期待は?
『人事のコアは、”組織を見立て、未来を描く”である』
曽和:人事のコアは、組織を見立て、未来を描くことだと思うんですよね。とくに採用のフロント業務はコア業務となるため、世界中探し回って採用するくらい注力するポジションです。組織の課題や将来の目指す姿を描き、それを伝える役割は一番のコア業務と言えます。また、人事の採用市場が非常に売り手になってきてますね。もし、外部の採用が難しい場合は、社内のポテンシャルのある人材を人事として抜擢し、育てていく方がマッチするケースもあります。
『コア業務以外は外部のサポートを受ける手段も選択肢に』
曽和:ありたい組織像に向かうためのツールなどは様々な手段として世の中にありますし、外部のリソースを活用することで進めていくことができます。人事のコンサル企業などを活用するのは、一つのSaaSシステムを導入するのと同じようなイメージですね。具体的には、オペレーティング業務などはアウトソーシングした方が良いと思います。判断したり戦略を練るのは社内人事がやるべきなのですが、どんどん変化していく組織においてはそうした作業ベースのものは外出しするのも良いです。
例えば、人事制度も同じですね。その会社のスピードやステージに合わせて思想がマッチしているプロフェッショナルな方がいれば、サポートしてもらいながら、その中の人事を育ててもらいながら内製化していくということが実現できます。
編集後記
インタビューの中で、「グレイナーモデルを変にショートカットしようとすると成長痛のような問題が起きる」という言葉があり、私としてはとても印象的でした。また、ついつい一気に次のステップへと駆け上がっていきそうな気持ちになりますが、それぞれのステップにおいての限界点を見極め、次の手へ進むということの大切さを痛感しました。
そして、急成長フェーズでの人事の役割について伺いましたが、やはり企業の成長段階やマネジメントなどの関連性が高く、改めて人事は経営であり、経営にとって人材や組織開発は欠かせないと身の引き締まる思いでいっぱいです。
人事は組織を客観的に捉え、成長スピードとマネジメントへのスタンスの決定、コア業務とノンコア業務分配を考えながら戦略的に打ち手を出し続けることが大事であると学びました。
みなさま、これからのSmart相談室のHRオフィスにご期待ください!!
現在、2人目戦略人事(タレントアクイジション)募集中です!
曽和さん、そして細田さん、貴重な機会をありがとうございました!