見出し画像

日本総研の小島さんに聞く! 働く人のメンタルヘルスのために必要なこと

 こんにちは!Smart相談室の藤田です。
今回は株式会社日本総合研究所で、多様な働き方に関する調査研究をされている小島明子さんに、働く人のメンタルヘルスについてお話を伺いました。さまざまなデータや調査に基づいて、働く人のメンタルヘルスに関する現状と課題について考えていきます。

小島 明子(こじま あきこ)
株式会社日本総合研究所創発戦略センター スペシャリスト

1976年生まれ。民間金融機関を経て、2001年に株式会社日本総合研究所に入社。多様な働き方に関する調査研究に従事。東京都公益認定等審議会委員。厚生労働省労働者協同組合促進モデル事業企画書等検討・評価委員会委員。主な著書に、『中高年男性の働き方の未来』(金融財政事情研究会)、『女性と定年』(金融財政事情研究会)、『協同労働入門』(共著・経営書院)。


小島さんが語る「働く人のメンタルヘルス」

1.労働者のメンタルヘルスに関する現状

 厚生労働省「過労死等の労災補償状況」によれば、精神障害の請求、決定及び支給決定件数は全体として上昇傾向であることが明らかになっています。令和5年度で支給決定件数のうち、最も多いのは、「対人関係(上司とのトラブルがあった)」であり、「パワーハラスメント(上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた)」、「仕事の量・質(仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった)」と続いています。
 

 また、支給決定件数の多い職種としては、「一般事務従事者」が最も多く、「保健師,助産師,看護師」、「自動車運転従事者」、「介護サービス職業従事者」と続いています。「一般事務従事者」以外の職種を見る限り、労働時間が交代制であるなど、体力も必要とされ、労働環境が問題となりやすい職種であることが想像されます。

 従業員にとって働きやすい環境が整備されていないと、働いている人自身のストレスがたまり、パワハラや人間関係の悪化といった問題が起きやすくなりますので、メンタルヘルス対策という視点でも、働きやすい環境の整備を行うことは重要だといえます。

2.企業に求められるメンタルヘルスケアの施策

 厚生労働省では、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルス指針)を定め、労働安全衛生法に基づき、事業者が講ずるように努めるべき労働者の心の健康の保持増進のための措置(「メンタルヘルスケア」)が適切に実施されるように、メンタルヘルスの原則的な実施方法が定められています。

 企業がメンタルヘルスケアを行ううえでは、ストレスチェック制度などの利用を通じてメンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う「二次予防」、メンタルヘルス不調となった労働者の職場環境の支援等を行う「三次予防」という、予防に向けた3つの視点が重要とされています。

 また、これらの予防策を進めるうえでは、教育研修や情報提供を行い、「4つのケア」を推進していくことが求められています。1つ目のケアは、「セルフケア」で、働く人自らがストレスに気づき、ケアをしていくことです。2つ目のケア「ラインによるケア」は、管理職が行うケアで、職場環境の改善や部下の相談にのることなどが挙げられます。3つ目のケアは、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」で、企業の産業医、保健師や人事部が行うケアですが、従業員の職場復帰に対する支援や、メンタルヘルスケアの実施に関する企画立案などが挙げられます。4つ目のケアは、「事業所外資源によるケア」で、職場以外の専門的な機関等と連携を通じて、従業員の支援などを行うことが挙げられます。

参照元:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf

 実際、メンタル不調によって休職者が発生してしまった場合、企業側がサポートを行っていても、その休職者がメンタル不調を克服し、職場復帰するのは容易ではありません。メンタル不調を発生させないように、いかに予防し、あるいは、メンタル不調者を早期に発見するかということが重要だといえます。

3.メンタルヘルスに関する企業の取組みの現状と課題

 厚生労働省 令和5年「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は、63.8%(令和4年調査63.4%)となっており、前回の調査に比べて、取り組む事業所がやや増えています。

具体的な取り組み内容としては、「ストレスチェックの実施」(65.9%)が最も多く、「メンタルヘルス不調の労働者に対する必要な配慮の実施」(49.6%)、「職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック結果の集団(部、課など)ごとの分析を含む)」(48.7%)と続きます。

 一方、「産業保健総合支援センターを活用したメンタルヘルス対策の実施」(2.8%)、「地域産業保健センター(地域窓口)を活用したメンタルヘルス対策の実施」(3.6%)、「医療機関を活用したメンタルヘルス対策の実施」(10.0%)といった、外部との連携は十分にできていないことが分かります。

過去に、私が往訪した企業のなかには、健康経営の一環として、産業医を利用するハードルを下げるために、まずは全従業員が一度は相談する機会を設けている取り組みを行っているところがありました。産業医であれば、人事部よりも気兼ねなく相談がしやすいとのことでしたが、日頃から専門家など誰かに相談ができるようにしておくことは、心身の問題について、早期の発見あるいは予防につながると考えます。

「人事担当者の想い」と「従業員の想い」

 ここからは藤田がお届けします。小島さんが書かれているように、日本ではメンタルヘルスに関する企業の取り組みが制度化されてきています。みなさんもご存知の通り、メンタル疾患の罹患者数は増加し続けており、その対策として、メンタル不調に対して早期に対応することがとても重要だということも理解されています。国として、企業としても、メンタルヘルスを課題として、認識しています。

 ではみなさん、企業のなかで、経営施策の一環で実施されるメンタルヘルスへの取り組みを、実際に行うことができていますか?
「私は調子が悪いです」と上司や人事に言えていますか?
仮に「調子が悪い」と言えたとして、その理由を正直に上司や人事に言えますか?
私は言えないです。

おそらく、相談してほしい企業側と相談したくてもできない従業員側で、相談できない、仕組みが利用されない「合理的なギャップ」が発生しています。では、どうすれば良いか。ご興味があれば、私の著書をペラペラしてみてください。


◼️Smart相談室へのお問い合わせ・取材依頼は以下よりご連絡ください。
・お問い合わせフォーム:https://smart-sou.co.jp/contact
・メールアドレス:pr@smart-sou.co.jp

X(Twitter)では毎日情報を発信しています。ぜひフォローしてください!