働く人は「キャリアコンサルティング」をどう扱えばよいのか? 〜キャリアコンサルティング協議会さんに聞いてみた!【後編】〜
こんにちは!Smart相談室CEOの藤田です。
みなさん、「3年後は仕事でなにしたい?」とか「今後のキャリアパスってどう考えているの?」とかって上司や人事から質問されたことありませんか?私は立場上、一緒に働くメンバーやカジュアル面談でお話する方に聞きまくっています・・・。
でも、すぐに答えるのって難しいですよね?新卒の就活のときは、ガチガチに自分のやりたいこととか、志望動機とか作り込んでましたが・・・。最近は、個人の考え方が多様になってきて、会社側も個人を尊重する流れになってきているので、余計に個人の意向をしっかりと確認するようになっているんだと思います。
そんな状況のなか、キャリアに関する自分の意志を明確にするために、キャリアコンサルティングを受ける方も、キャリアコンサルタントになる方も増えていますよね。また、会社でセルフ・キャリアドックを導入される企業さまも増えています。
Smart相談室は、
と考える企業さまにもご活用いただいています。それほど、社員自身がキャリアパスを考えることが重要視されているのだと思います。
一方で、キャリアコンサルティング、キャリアコンサルタントに関して、その実態を十分に理解できていないという声や、人事部として活用するイメージがわかない、という声も多く聞きます。ご質問を受けるたびに、自分なりに回答してきましたが、ご質問を受ける機会が増えてきたため、今回はキャリアコンサルタントとキャリアコンサルティング技能検定の国家試験の実施および国家資格の登録までを担う、キャリアコンサルティング協議会さん(以下、CC協議会)にお話を聞いてみました!今回は後編です。
資格は信頼の証、それぞれの目的に則したキャリア系資格がある
(藤田)前編に引き続き、よろしくお願いします!最初はこの話題から。そもそも「キャリア〇〇」って似たような肩書がたくさんありますが、どう違うのでしょうか?
(CC協議会)キャリアコンサルティング関連の資格のうち、国家資格は「キャリアコンサルタント」とその上位資格である「キャリアコンサルティング技能士 2 級、1 級」(以下、技能士)の 2 種類のみになります。
キャリアコンサルタントと技能士は、該当資格を持っていない限りその肩書を名乗れない「名称独占資格」ですが、資格を持つ者だけがその仕事に従事できる「業務独占資格」ではありません(*1)ので、「キャリアアドバイザー」「キャリアカウンセラー」などの似た名称がたくさん存在します。ちなみに「キャリアカウンセラー」は、特定の認定団体が提供する民間資格です。
それらの違いはその成り立ちにあると思います。例えば「キャリアコンサルタント」及び「技能士」でいえば、産業・職業構造の変化、労働者意識の変化、労働移動の多様化などに対応した雇用政策として立ち上げたものなので、厚生労働省が認定する国家資格という位置づけですが、いずれの資格も「生涯にわたるキャリア形成を支援する役割」であるという点は共通です。
ただし、資格という位置づけは支援を受ける方に向けての、目に見えないその技能を証明すること、働く人々の課題解決に責任をもって貢献するなど、信頼の証であると考えます。キャリアコンサルティングに従事したい方は、相談者のために研鑽を続ける自身のキャリアのマイルストーンとして、ぜひ国家資格の取得を目指してみてください。
*参考
・「全ての人の「学ぶこと」「働くこと」「生きること」をサポートするプロフェショナルになりませんか。」/キャリアコンサルティング協議会https://www.career-shiken.org/lp/
・「キャリア・カウンセリングとキャリア・コンサルティング」/木村 周https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2015/04/pdf/042-043.pdf
キャリアコンサルティングはどこで受けられる?
(藤田)キャリアコンサルティグって、どこで受けられるんですか?
(CC協議会)意外と身近で受けられますよ。例えば、キャリアコンサルタントは、キャリア形成や職業能力開発等に関する相談・助言(キャリアコンサルティング)を行う専門家で、平成28年4月より、職業能力開発促進法に規定された国家資格でもあるんです。国の名簿に登録しているキャリアコンサルタントは、77,174名(2024年10月末現在)おり、個人のキャリア目標の達成やキャリアアップに関するサポート等のサービスを提供しています。
活動場所は、企業内、需給調整機関(ハローワーク等)、学校・教育機関、地域など多岐にわたり、その活動領域も拡大しています。
キャリアコンサルタントを探すには、キャリアコンサルタント検索システム「キャリコンサーチ」が便利です。キャリコンサーチで情報公開しているキャリアコンサルタントは 6,859名(2024年10月末現在)で、「居住地」や個別面談等の「対応可能業務」、就職支援等の「対応可能領域」、女性の復職支援や介護・育児・治療の両立支援等の「得意分野」等、さまざまな条件で探すことができるので、ぜひ自分に合ったキャリアコンサルタントを探して相談してみてください。
キャリアコンサルティングに準備は必要ありません、手ぶらでどうぞ
(藤田)キャリアコンサルティングを受ける、となるとちょっとハードルが高い感じがします・・・。ちゃんと資料を準備して、心の準備が必要で・・・というイメージです。
(CC協議会)いえいえ、準備は必要ありません。手ぶらで大丈夫です。
「何から話していいかわからない。」「ただ話を聞いてほしい。」それでも全然 OK です。キャリアコンサルタントは、傾聴のプロフェッショナルですから、お話を詳しく聴きとって、悩みや目標などを一緒に整理・確認し、サポートを行います。
ただキャリアコンサルティングの相談時間は、一般的に40分から60分程度に設定されていることが多く、また例えば学習計画などを含む、中長期的なライフキャリアプランを検討する場合や、それぞれの状況によって、複数回にわたる継続的な相談が必要になるケースがあります。
限られた相談時間を有効に使うために、キャリアコンサルティングを受ける前には「これまでの経歴」や「相談したい内容」などを簡単にまとめておくことをお勧めします。相談内容を自身でまとめることは、悩みや問題を整理するうえでも、とても有効です。
キャリアコンサルタントには、厳正な「守秘義務」があり、秘密が守られます
(藤田)でも、キャリアコンサルティングって、話したことが会社とかに伝わってしまいそうで、本音で話せない気もします・・・。
(CC協議会)キャリアコンサルタントには、医者や弁護士、公務員と同じで法律で「守秘義務」という業務上知り得た秘密を守る義務が課せられています。さらに職務を果たすうえで規範となる「キャリアコンサルタント倫理綱領」において、
と定められています。
そのため、キャリアコンサルタントに相談しても、その内容が会社に知られることはありません。キャリアコンサルタントは、組織の環境改善のために働きかけることがありますが、相談者の個人情報やプライバシー保護に十分配慮し、個人の相談内容が特定されない形で組織の課題等を報告しますので、安心して相談してみてくださいね。
この「キャリアコンサルタント倫理綱領」は、2024年1月1日に改定されており、特に第 5条(守秘義務)は、ケースに合わせた具体的な内容が増え、条項が厚くなっており、相談者をしっかりと守ります。
ただお話するだけでもいい、「もやもや」とか、「困惑」とかが少しでもあったら
(藤田)キャリアについて相談することがないと感じている方も多いように思います。それでもキャリアコンサルティングは有効ですか?
(CC協議会)キャリアコンサルティング協議会が行った「相談するということ実態調査(2023年8月)」では、キャリアコンサルティングを受けない理由として、「相談する悩みがないから」が、30.5%にのぼりました。
「相談する悩みがない」状態は健全な状態ではありますが、ただ、もし仕事に係る「もやもや」とか、「困惑」とかが少しでもあったら、キャリアコンサルティングを受けてみましょう。相談だからと身構える必要はありません。お話しをする感覚で気軽に相談してみましょう。キャリアコンサルタントは傾聴のプロフェッショナルです。「もやもや」が「悩み」に固まってしまう前の「プレ悩み(プチ悩み)」の段階で、キャリアコンサルティングを受けることをお勧めします。
また、「相談する悩みがない」のであれば、ぜひ、リスキリングなどの学習・将来計画といったライフキャリアの視点での積極的な相談をキャリアコンサルタントにしてみましょう。
厚生労働省は、2023年度に引き続き「キャリア形成・リスキリング推進事業」を 2024年度も展開しています。リスキリングなどの学習、将来計画に関する支援もまたキャリアコンサルタントの役割の 1 つです。
*参考:キャリア形成・リスキリング推進事業/厚労省
資格取得で活躍の場がさらに広がっているキャリアコンサルタント
(藤田)キャリアコンサルタントにはどのような方が多いのでしょうか?
(CC協議会)キャリアコンサルタントの多くは、会社や組織内での人事部門、また大学等の就職支援や転職・派遣等の人材紹介サービス、その他、医療・福祉の現場などで活躍されています。
キャリアコンサルタントになるためには、まずは国家資格キャリアコンサルタント試験(以下、試験)に合格する必要があります。なお受験には受験資格を満たしていることが必要です。試験に合格後は、キャリアコンサルタント名簿に登録することにより「キャリアコンサルタント」として名乗ることができるという仕組みです。なお試験に合格しても登録を行わない場合は「キャリアコンサルタント」の名称を使用して活動することはできませんのでご留意ください。
試験では、キャリアコンサルティングに関する専門的な問題が出題され、実技もありますので、初めて学ばれる方や相談実務の経験がない方は、厚生労働大臣が認定する「養成講習」を受講することから始めることをお勧めします。
*参考:
・キャリアコンサルタント試験 Web サイト「受験概要」/キャリアコンサルティング協議会
https://www.career-shiken.org/about/
・「キャリアコンサルタントになりたい」/キャリアコンサルティング協議会
(藤田)たくさんの疑問に答えていただき、ありがとうございました!
👇️前編はこちらから
キャリアコンサルティング協議会について
特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会はキャリアコンサルタントを養成する団体、能力評価試験を行う団体及びキャリアコンサルティングの実践・研究等に関わる団体が相互に協力して、キャリアコンサルタントの資質確保活動とキャリアコンサルティングの普及啓発活動を行うことを目的として設立した団体です。
こうした活動を通じて、キャリアコンサルタントが確立された専門家として成長し、個人の主体的なキャリア形成の促進及び職業生活の充実並びに組織(企業、団体等)の運営に貢献することにより、キャリアコンサルティングが社会インフラとなることを目指すものです。
今回のインタビューは、そんなCC協議会のなかにあるブランディングプロジェクトチームが担当いたしました。このチームでは、キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタントがよりみなさんの身近なものになるよう、調査活動やコラム発信を行っています。
*1,120人に聞きました「相談するということ実態調査」
*キャリアのことを「ゆるやか」に考えるコラム「ゆるキャリ」
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